年に1回、全国持ち回りで開催されている全国登文会フェスタと総会が、6月21日(金)、22日(土)、三重県で開催され、会員数名で参加しました。フェスタの主催は、みえ登録有形文化財建造物友の会(通称、みえさんとうぶん)。近鉄賢島駅に集合し、10時50分から15時まで、大型バスで志摩市内登録有形文化財建造物探訪をさせていただきました。

6月21日、まずは、賢島駅から徒歩で、登録有形文化財である松井真珠店さんへ。明治38年(1905)に英虞湾に面した志摩半島で創業、当初は天然真珠を取り扱っておられましたが、大正12年(1923)より養殖を開始し、昭和4年(1929)に現在の場所に店を構えたそうです。つまり、建築年代は昭和4年(1929)ですね。

店舗内は、昭和レトロな雰囲気がここかしこに感じることができます。ショーケースの中には、美しい真珠のアクセサリーが並びますが、今日は建造物探訪ということです。

続いて、大型バスで、旧猪子家住宅へ。英虞湾を見下ろす高台にある昭和9年(1934)に建てられた住宅で、生命保険会社の支店長などを歴任した徳島県阿波市出身の猪子彌平(いのこやへい)さんの退職後の住まいだったそうです。

こじんまりとした平屋建てですが、玄関の右手には応接室があり、その外観は和洋折衷様式です。座敷廻りもこの地方らしさといえるのでしょうか。京風の滋賀の座敷構えとは少し印象が異なります。水廻りもコンパクトですが、落ち着いた感じを受けました。平成29年に丁寧な保存修理工事が実施されており、ご案内いただいた三重県のヘリテージマネージャーさんの熱い思いに感激しました。

大王崎灯台も登録有形文化財です。志摩半島の大王崎の突端に建つ中型の灯台で、「日本の灯台50選」に選定されているそうです。昭和2年(1927)に建造され、入口には、古典主義風デザインを施していると評価されています。

伊勢神宮の別宮伊雑宮の門前に位置する中六商店さんにも伺いました。昭和4年(1929)に旅館として建築された木造2階建てでL型の平面形の建物で、鰻料理の名店だそうです。

15時からは、志摩市立図書館ホールで、フォーラムです。国登録有形文化財の保存・活用についてという内容で、基調講演 熊本達哉元文化庁調査官がお話しいただきました。登録有形文化財所有者の中には、たいへんお世話になった方もおられると思います。

その後、パネルディスカッションもありました。フォーラムとパネルディスカッションは、ZOOM配信もされていて、遠方でもご覧になった方々もいます。さんとうぶんさんの心のこもった運営にも、感動しました。

初日の最後は、17時30分から、はな屋さんで懇親会です。京都登文会の塚本会長、そして、滋賀登文会の兼子会長もご挨拶させていただきました。

翌6月22日、午前中は、2コースの用意されていて、Aコースの伊勢市登録有形文化財建造物探訪に参加しました。近鉄伊勢市駅に集合し、そこから路線バスを活用した見学コースです。

まず、最初に訪れたのは、御師丸岡家住宅
御師(おんし)とは、社寺に参拝する人たちの参拝や宿泊のお世話をする神職のことです。丸岡宗丈夫は、御師として中規模程度で、檀家は約8千軒の規模だったそう。現在の旅行会社のような役割を担っていました。なお、当時、宇治山田に800軒あった御師邸も、現在はこの一軒を残すのみであり、
非常に貴重なものです。

続いて、小西萬金丹

小西家は安土桃山時代に堺で製薬の秘方を譲り受け、延宝4年(1676)に現在の場所に店を開き、萬金丹を販売したそうです。江戸時代から「伊勢の霊薬」として人気の漢方薬の老舗です。明治初期に江戸時代の姿を守らせて建てられたものだそうです。

こちらは、旧山田郵便局舎です。

伊勢神宮外宮の北側にある旧電話局。煉瓦造平屋建で、赤色の桟瓦葺屋根が印象的です。逓信省技師・吉田鉄郎の最初期の設計作品で、大正12年(1923)に建てられた大正ロマン溢れるレトロな洋館。

現在は、伊勢を代表するフレンチレストランが入居しています。

続いては、近鉄宇治山田駅舎

昭和6年(1931)に参宮急行電鉄の終着駅として建設されたモダンな鉄筋3階建の建物。

貴賓室があり、天皇陛下や内閣総理大臣等の伊勢神宮参拝の際の乗降駅となっています。

農業の啓発と発展を目的として建てられた神宮農業館

明治42年(1909)に日本で最初の産業博物館として創設されました。外観は和風で,内部架構は洋風にまとめられており、印象的なデザインです。設計は片山東熊。

最後に、神宮徴古館です。

明治42年(1909)に、神宮の歴史資料を収集展示する目的で、日本で最初の私立博物館として創設されました。設計は片山東熊・高山幸次郎で,煉瓦造に石貼仕上げとする端正な意匠の建物。

さんとうぶんのみなさんの心のこもったご案内に感服しました。

午後からは、三重県伊勢市の皇學館大学記念館講堂で、令和6年度の全国登文会・総会が開催されました。秋田県、福島県をはじめ、全国各地から、国登録有形文化財建造物を継承・活用されている会員の方々が集まられました。

総会で、新しく、理事4名、会計1名が選出され、今年度の新しいスタートを切りました。滋賀登文会の兼子鐵秀会長も新規理事として選任されました。また、次年度事業として、全国登文会のリーフレットも更新される予定です。

全国登文会・顧問の後藤先生のご講演の後、文化庁の清水さんによる全国の登録状況などの説明があり、全国登文会の輪を全国に広げて行くことについて、皆の意見が一致しました。

各地域の登文会設立状況として、現在、千葉・奈良・香川にて設立準備が進められています。 

大阪、三重に続き、来年度・第三回目の全国登文会の開催地は、京都に決定しました。