若林家住宅は、昭和前期に若林製絲紡績の創業者の住宅として建てられました。広大な敷地の周囲を塀で囲い、北側に通る前面道路に門を開きます。主屋を中心に台所棟、座敷棟、茶室棟を雁行して建て、主屋の東側には洋室棟が建ちます。主屋北側には前庭・北庭を、南側には広大な池泉庭園を設けます。また、敷地の東端には、北土蔵と南土蔵、2棟の土蔵が並び、建設当時の状態を良く留めています。
主屋は、北面に玄関を構え、南側の八畳座敷には大振りの花頭窓を穿つなど大胆な意匠の座敷飾を備えます。洋室棟では、一階応接室の暖炉や腰掛付出窓などにチューダー様式を取入れ、天井のレリーフを彩色で飾るなど洗練した意匠が見られます。台所棟は、夫人室と台所、風呂などからなり、夫人室の天井の一部を掛込天井とし、三角平面の釣床を備えるなど闊達な数寄屋意匠をもちます。座敷棟と茶室棟は、現在の敷地より北西方にあった旧宅地に建てられていたものを移築したと伝わり、原叟床風の床や縁の軒の小丸太を扇状に配り軽快に見せるなど、特徴的な意匠が見られます。
若林家住宅は、地元の有力な実業家の住宅として建てられた豪奢かつ上質な意匠をもつ大型の近代和風住宅として貴重な遺構です。

登録内容

登録対象主屋・洋室棟・台所棟・座敷棟・茶室棟・北土蔵・南土蔵・門及び塀
年代主屋/洋室棟/台所棟:昭和3年(1928) 座敷棟/茶室棟:大正13年(1924)/昭和3年(1928)移築 北土蔵/南土蔵:大正9年(1920)/昭和3年(1928)移築 門及び塀:昭和前期
構造及び
形式
主屋/洋室棟:木造2階建、瓦葺 台所棟/座敷棟/茶室棟:木造平屋建、瓦葺 北土蔵/南土蔵:土蔵造2階建、瓦葺 門及び塀:木造、瓦葺
建築面積主屋:117㎡ 洋室棟:28㎡ 台所棟:72㎡ 座敷棟:108㎡ 茶室棟:27㎡ 北土蔵:44㎡ 南土蔵:39㎡ 門:間口3.0m 塀:延長68m
登録の基準主屋/洋室棟/台所棟/座敷棟/茶室棟:2 北土蔵/南土蔵/門及び塀:1